管理会社変更のよくある失敗例
1.営業マンの印象で決めてしまう
新しい管理会社をさぁ選ぼうとなったとき、業者による説明会を開催するのが一般的です。
でも業者の営業トークを聞いてその良し悪しを判断するのは簡単なことではありません。 営業マンはみな口がうまく、人に好かれる雰囲気、いかにも仕事のできそうな雰囲気を持っています。
持参する資料はしっかりしたものだし、プロジェクターを使った説明はわかりやすい。 その仕事ぶりはこれまであなたが見てきた管理会社社員とはたぶん何もかもが違っているので、
「こんな人が担当に付いてくれるのなら・・・(´∀`*) 」
と組合がすっかりその気になってしまっても不思議ではありません。
それが誤りだったと気付くのは、実際に新しい管理会社のサービスが始まってから。
あの(仕事のできそうな)営業マンとは全然別の、いかにも頼りにならなそうな物件担当者がやってきて、
アレ・・・? (・∀・;) 、ということに。
大抵どの会社でも営業担当者と現場担当者は違う人物です。
それなら営業マンの雰囲気で新しい管理会社を決めるのは危ないはず。
説明会には実際に現場を担当する人物を連れてきてもらうのが良いでしょう。
2.管理組合がバラバラになってしまう
あなたが今の管理会社に不満で変更を望んでいたとしても、他の理事たちも同じように考えているとは限りません。
会社を変えて前より悪くなることを心配する人もいれば、単に面倒くさがって今のままでいいじゃないかと言う人もいれば、 中には今の業者に愛着を持っている人だっているかもしれません。
そういう消極的な人たちを見て、あなたは歯がゆさを覚えるかもしれない。
つい強引に彼らを押し切ってしまいたくなる衝動に駆られるのではないでしょうか。
「自分が1番このマンションのことを考えている。だから押し切る権利がある!」
そんな風に思う気持ちもわからないではありませんが、でも止めておくのが賢明です。
危険なことです、それは。
押し切られた方は当然面白くありませんから、そこから管理組合に不協和音が生まれます。
いつしかそれは感情的な対立へとエスカレートし、組合を真っ二つにするかもしれません。
決して大げさな話じゃありません。そうなった組合は実際多いのです。
しょせん他人の寄り集まりですから。
最悪の場合、理事の誰かがマンションを転居する事態につながります。
だからこそ管理会社を変更する際は、 どうして今の会社を変えなければいけないかを理事会のメンバー全員に納得してもらうことが重要です。 いわゆる「合意形成」。ここ、とても大事です。
ちなみに我々マンション管理士にコンサルを依頼するメリットの1つがここにあります。
外部の専門家の意見があると、組合の意見が1つにまとまりやすいのです。
合意形成がスムーズにいきます。
3.ランキングで選んでしまう
新しい管理会社を選ぶのに、巷のランキング結果を気にする人は多いと思います。
受託戸数ランキングとか満足度ランキングなど。
でもああいうのはあまりアテにならないので参考程度にしておくのが良いでしょう。
請け負っている棟数や戸数が多いのは、何も良い仕事をしているからというわけではありません。 単に営業を頑張ったとか、親会社のデベロッパーに回してもらったとかです。 管理会社はそうしょっちゅう変えるものではありませんから、我慢して仕方なくつきあっている組合は相当数にのぼるはずです。
満足度調査もいい加減です。
実際私はあの種のランキングで1位に(←本当に1位です)輝いたことのある会社が、しかし基本的な仕事さえできないでいるのを間近で見てきました。
仮にああいう調査が本当にお客さんの満足度を反映しているとしましょうか。
(してないと思いますが・・)
それでもその上位の会社があなたのマンションにとっても最適であるとは限りません。
管理会社にはそれぞれ得手不得手というものがあり、例えば大きなマンションの管理にふさわしい会社もあれば、その逆もあります。
理事会がしっかり機能しているマンションにはお奨めできるけれどもそうでないところには・・・という業者もあります。
管理会社を変更する際、最も重要なのは管理組合との相性です。
フロントマンの当たり外れも激しいので気をつけないといけません。
その辺りを見極めるのが難しいから私のようなコンサルがいるわけで。
ランキングで会社を選べるなら誰もがコンサルになれます。
4.会社の違いがわからない
管理会社を変更しようとなったら、まずいくつかの候補会社から見積りを取るわけですが、 この時どういう形式で見積りをお願いしますか?
おそらく今の管理会社との契約書を見せた上で、「このサービス内容なら御社はいくらで引き受けてくれますか?」 というやり方を取る管理組合が多いと思います。
でもそれは良くないやり方です。
そういうやり方で単に価格を比較しても意味がありません。
というのも同じ条件での比較になっていないからです。
「同じ契約書を見せているんだから、同じ条件での比較じゃないの?」
いいえ、実は管理会社ごとに業務のやり方はけっこう違うものなのです。
同じ名前が付いている業務でも、会社によって取り組み方のレベルが違います。
例えば「理事会の支援」という業務が契約にあったとしても、それがどのレベルでの「支援」を指しているのか、業者によって「解釈」が違います。 必ずしも管理組合の求める仕事レベルに達しているとは限りませんが、 しかし向こうからわざわざそれを教えてくれることはないでしょう。
だからこそ管理会社を正しく比較するためには、より踏み込んだ内容の質問をぶつける必要があります。 具体的に何をしてくれるのか、何をしてくれないのか。
私の事務所ではマンションごとにオリジナルの200項目ぐらいの詳細なチェック事項を作成し、 見積りする管理会社に回答を求めるようにしています。
ここまでやると会社ごとの違いがわかります。
能力も、そしてやる気も。
5.削減した分を還元してしまう
実際に私の元を相談に訪れた管理組合から聞いた話です。
そのマンションは管理会社を変更することで、大幅な管理委託費の削減に成功しました。
当初は浮いた分のお金をマンションの積立金に回すつもりだったのですが、 新しい管理会社からはそれとは違うアドバイスが。
「委託費が安くなった分を各世帯に還元して管理費を下げてはどうですか?
その方が理事会が感謝されますよ?」
それもそうだ、良いアドバイスだと思い、その通り各戸から徴収する管理費を下げたのだそうです。
その後、新しい管理会社のサービスが始まってみると驚かされることばかり。
物件担当者は素人同然の契約社員で、新管理人はまるでやる気を感じさせない人物。
マンションの改修が迫っていたので新管理会社に相談するも、お金を払って別契約を結ばないと相談にさえ応じられないとのこと。 文句を言うと「この値段でこのサービスなら良い方ですよ」と、まるで相手にならず。
これはダメだ。また管理会社を変えないと・・。
ところが既にギリギリまで委託費を下げて各世帯に還元しているのですから、会社変更は管理費の値上げにつながってしまいそうです。
ためしにいくつかの業者に今の金額で引き受けてくれないか打診してみるも、やはりダメ、全滅でした。 今さら管理費を上げることもできず、仕方なく今のダメ管理会社と付き合っていく道を選んだとのことです。
原因を作ってしまった当時の理事会は批判にさらされ立場を失いました。