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大規模修繕について、このような情報を載せているサイトです

大規模修繕を管理会社にお任せするマンションが、
近頃はぐんぐん減ってきてるというね。

ほう、そうですか。

お任せの弊害が広く知られるようになってきたんだ。
お任せは高くつくから、管理組合主導でやるべきなんだと
気付くマンションが増えてきた。

いいことなんじゃないの。

まぁそうだろうね。
でも管理組合主導の大規模修繕とは、じゃあどういうものを指すのか、
そこをよくわかっていないマンションはまだまだ多いのではないだろうか。

さぁそうなのかな。

施工業者を自分たちで選べば、それだけでもう立派に管理組合主導だ、
じゅうぶんに合格点といえる、なんて思っていないだろうか。

それじゃダメなの?

全然ダメだと思う。目指すところはもっと高みにある。
真の管理組合主導とはどういうものをいうのか、
自分がコンサルを手がけたマンションの事例で説明しよう。

管理組合が納得しながら進める大規模修繕

ある日の問い合わせ

ある日、うちの事務所に問い合わせの電話があった。 これから大規模修繕をするんだけど、マンションに来て考え方をレクチャーしてくれないか、というものだった。

考え方というとつまり?

コンサルの基本理念を知りたかったんだろう。 後から聞いたにはそのマンション、面白そうなコンサルに片っ端から電話をかけては、 話を聞いていたんだって。

で、どんな話をしたの?

業者におんぶに抱っこではなく、自分たちで理解しながら工事を進めていくことが大事なんですよ、 みたいな話をした。

そしたら?

ひびいてくれたみたいだった。

仕事が取れたんだ。

うん、最終選考に大手設計事務所とうちの2つが残って、うちは事務所の大きさでは負けてたんだけど、 何か期待させるものをうちに感じてくれたみたい。

何に期待したんでしょ?

そのマンションは過去に、管理会社にお任せで大規模修繕をして、 まぁ失敗したというか結果に満足できなかったという経緯があるんだそうなんだよ。

ほう。

だから会社の規模よりも、どれだけ管理組合に近いところにいてくれるかを見たらしい。 大手のペースで押し切られることに、不安があったのかもしれないね。

マンションの事情

さて、こうしてコンサルに入ることになったわけだけど。

わけだけど。

まずマンションのスペックから説明しとこうか。
築36年、11棟構成で戸数はおよそ150。

11棟もあって150戸しかないんだ。

一戸あたりが広いんだよ。 超高級マンション。

セレブなんですな。

大規模修繕は過去に2回やってる。
どちらも管理会社にお任せするやり方で。

で失敗したって、さっき言ってたね。

失敗というか、まぁ不満の残る内容ではあったらしい。 相当のお金を使ったわりに、修繕の範囲が狭かったんだ。 直したいのに直してもらえない箇所が多くあった。

それはつまりお金が足りなくて?

そう。積立金を空っぽにして、おまけに追加の徴収金も1億ぐらい払ったわりに、 ひび割れたタイルはそのままだったり、バルコニーの防水もできなかったりで、あれれ?な結果だったらしい。

よっぽど悪い業者に当たったんじゃないの?

業者は管理会社も施工業者も、どちらも折り紙つきの大手だよ。 そのぶん失望も大きかったんじゃないかな。 大手に任せれば、よきにはからってくれるものと信じてたのに。

信じてたのにぃぃ。

どうも自分たちの積立金が雑に使われた気がする。 同じお金でもっといい工事ができたのではないか。業者任せはよくなかったのではないか。これが管理組合が目ざめるきっかけになった。

もっと賢い消費者になろうと。

そういうことだ。ちなみにそのマンション、管理組合が長いことぜんぜん機能してなかったんだけど、 この工事の苦い経験がみんなの意識を変えた。今はもう驚くほど活発な組合になった。

じゃ悪いことばかりでもなかったんだね。

まぁそうだね。で今回が管理組合が目ざめてから初めての大規模修繕になるわけ。だからみんな凄い気合い入ってたのさ。 今度こそはと期する気持ちが強い。

今までのオレたちとは違うぜ、と。

そんなわけで管理組合の主導で行うことに強いこだわりを持っていたんだ。 うちの事務所に求めていたのは、自分たちがわからないことを教えてくれる通訳の役割。 コンサルにお任せで進めようなんて、ぜんぜん思ってない。

意気盛んですな。

やる気に燃えてるマンションを手伝えるのは、やりがいあるよ。 まぁ要求が高くなるぶん、こっちはしんどいんだけどね。

業者任せではいけない理由

はっきり言えば業者にとって、マンションのお金はしょせん他人のお金です。 工事が高くつこうが構わないし、結果として修繕の範囲が狭くなろうが、自分が住んでるわけではないので痛くありません。

億を超えるような高価な買い物をするんだから業者だってきっと親身になってくれるはずだ、とお人好しの管理組合は考えます。 でも大して考えてくれやしないのです。業者はいつもそういう額の工事を受注しているし、仕事は常に効率よく済ませたい。

例えば箇所A、箇所B、箇所Cの3箇所を直すとして、オーソドックスに工事をしていたら2500万円かかりそうだとします。↓

それぞれの箇所の工事価格

しかし予算は2000万円しかないとします。つまり500万円足りない。 そのときにどうするか。

マンションのことを真剣に思うなら、いろいろな可能性を検討するでしょう。 例えば3箇所の工事のグレードをそれぞれ少しずつ下げて、なんとか予算内に収めるのがいいのかとか、↓

それぞれの箇所の変更後の工事価格

あるいはA、Bの2箇所だけグレードを下げ、費用の足りない分だけ臨時徴収するとか。↓

それぞれの箇所の変更後の工事価格その2

はたまた、管理費を削減してそのぶんを積立金に充当し、資金そのものを増やすという手だって考えられます。 選択肢はたくさんあるので、その1つ1つを慎重に検討しなければいけないと思うはずです。

しかし業者は、全体の傾向としては、そういう検討をあんまり親身になってやってはくれません。 お金が足りなら早く臨時徴収してくださいとか、それでも無理なら3箇所の工事は諦めて今回は2箇所にしましょうとか、 けっこう大雑把なのです。面倒な問題をさっさと片付けようとするのです。

業者なんてみんなそんなものだからコンサルを雇え、と言っているのではありません。 コンサルだって業者だし他人だし、そのマンションに住んでいるわけではありません。

信じられるのは、実際にマンションに住んでる自分たちです。 自分たちがしっかりしなければ、マンションのお金を雑に使われてしまいます。 業者にお任せではなく管理組合主導でやらないといけないのは、つまりそれが理由です。

マンションの問題点

さて、こうしてコンサルに入ることになったわけだけど。

わけだけど。

一筋縄でいかない仕事になるだろうことは、すぐにわかった。 設計にそうとう頭を絞らないと、管理組合の要望を叶えられそうにない。

設計って図面を描くこと?

いや、大規模修繕の設計は、工事のプランニングのこと。 どの箇所を、どういう工法で、どういう材料を使って直すのかプランを立てること。 これを設計といって、コンサルタントの一番大事な仕事になるの。

難しい仕事なんだろうね。

いやまぁ工事の資金が豊富にあるんであればね、セオリーに従っておけばいいというか、 プロにとってそこまで難しい仕事ではないんだ。

言いますな。

でも資金が豊富なマンションなんてなかなか無いのが現実。 セオリー通りの工事なんてしてたら積立金が足りなくなるのは明白、というケースがほとんどで、 今回のマンションもやっぱりそうだったというわけ。

そういうときはどうするの?

どうって何とかするのがコンサルの仕事さ。

どうやって何とかするのさ?

あの手この手を駆使してさ。安く工事してくれる業者を探すのはもちろんのこと、 修繕方法を工夫して、ときにイレギュラーなやり方での工事を検討したりして、何とか資金内に収まるよう最善を尽くす。

収まらなかったら?

管理組合のムダな支出をカットしてそのぶんを工事にまわしたりとか、それでもダメなら臨時徴収とか借り入れも検討しないといけない。

大変そうですな。

大変なんだ。その大変な部分をどれだけ熱心にやってくれるかが、コンサルの成績表と言っていい。 大して努力もしないで、「まぁお金が足りないから仕方ないですね。今回はこの部分の工事は見送りましょう」 なんて簡単に問題を先送りするのがダメなコンサル。

ねばっこさが大事なんだ。

これから説明するけど今回のマンションはさ、マンションのここを修繕したいんです、という管理組合の要望がはっきりしていたわけ。 つまりそこをクリアできなければ、今回の大規模修繕も失敗だったね、で総括されてしまう。

厳しい状況だね。

何が何でも成功させてみせると、こっちも闘志を燃やしていたのさ。

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