アフター点検に専門家のチェックを
正当なアフター保証を受けるために
マンションを新築したり大規模修繕をしたりすると、その1年後とか2年後くらいかな、アフター点検というのをやるんだ。 知ってるかな?
知ってるような知らないような。
工事に欠陥がなかったかチェックしてまわるわけ。業者と管理組合が一緒になって。
施工直後じゃわからなかった欠陥に、しばらく経ってから気付くこともあるじゃないか。
ありそうだね。で欠陥が見つかったら何だっての?
直してくれるの?
そう直してくれるの。無料で。
そういうのアフター保証っていうんだ。
嬉しいね。
ところがこれは業者にとってみればぜんぜん嬉しくないことなわけ。 一文の得にもならずにタダ働きさせられるんだから。
まぁそうだろうね。
でも直すって決まってるんだから直してくれるんでしょ?
それがそう簡単でもないんだ。
向こうはなんだかんだ理屈をつけて直すのを渋る。
一体どんな理屈をつけるのさ?
これは欠陥というほどではありませんよとか、専有部分なら住人が何か変なことして壊したんでしょとか言って、 責任を認めようとしない。
けしからんね。
そもそも欠陥に気付かなければ、直してもらうよう要請することすらできないわけだからね。 建物のどこに欠陥があるのか、管理組合だけで見つけることができるかい?
こっちが何も言わなければ向こうは直してくれないの?
業者もいちおう自分たちで欠陥を見つける姿勢はとるよ。マンションをぐるっと回ったりして。 でもポーズですわね。会社の損になるものを積極的に見つけてくれやしないさ。
見て見ぬふりをするってこと?
そういうこと。だって直すよう頼んだって渋るくらいなんだよ。 要請すらないものを自分から直すと思う?
困りましたな。
まとめるとこうだ。
正当なアフター保証を受けるために、管理組合にとって2つの壁がある。↓
- そもそも欠陥に気付くことができずに放置される
- 欠陥に気付いても、なんだかんだと理屈をつけられ修繕を渋られる
この2つの壁を乗り越えるためにお勧めの方法がある。
自分を雇えってこと?
そういうことだよ。さすが理解が早い。
管理組合の側に立ってくれるプロをつけること。プロに対抗するには、管理組合の方でもプロを立てないと。
そんなもんかね。
管理組合が気付かない欠陥に、プロなら気付くこともあるじゃないか。 会社がなんだかんだ言い訳しても、プロなら反論できる。 これって役に立つと思わないかね?
全く立たないことはないだろうけど、そこまでメリットあるかな? そもそも欠陥ってそんなに見つかるもんなの?
うちが大規模修繕の仕事でマンションを見るとね、 これ施工時の不良だったんじゃないのかなって思えるケースが相当あるよ。50%ぐらいのマンションで見つかると感じる。
大きな欠陥がってこと?
例えばどんな?
外壁を点検したらタイルの浮きが10%もあったとかね。20%あったこともある。 普通は1〜3%で多くて5%だから、施工不良だったんだろうなぁって。
じゃタダで直してもらえるの?
そこが難しいところなんだけどね、大抵の場合、その欠陥に気付くのって大規模修繕の直前なんだよ。 そろそろ大規模修繕だからマンション点検してみますかって、そこであれれ?な欠陥に気付くと。
それだと何かまずいの?
欠陥に気付いた時は、保証期間が過ぎてることが多いの。
そういう場合は諦めるしかないんだ。
いや必ずしもそうじゃない。 会社はそう言ってくるけど実際はそう単純なものでもなくて、保証期間が過ぎてたって責任を追及するロジックはあるにはあるんだよ。 実際に追及して補償させたこともある。
でも難しくはなると。
そういうこと。できれば保証期間内に見つけておきたい。 でも現実には期間内にしっかりした点検をするマンションが少ないからさ、ほんとは無料で直せたはずのものに無駄なお金を使わされてるんだよ。
いかんですな。
とあるマンションのケースなんだけど、エントランスの天井から漏水してたわけ。
ほう。
それは施工直後に管理組合がすぐに気付いたんだけど、会社からはただの結露だと言われて、応急処置しかしされなかったんだ。
嘘つかれたってこと?
故意の嘘だったかはともかく、間違いだったのは確か。完全な漏水。 ウチが大規模修繕で入って点検したら見つかって、こんなの会社の瑕疵でしょうと。
会社は何て言ってきたの?
もう保証期間すぎてるから直せないって。
でも食い下がったんだ。
当然ですわね。管理組合は早い段階で指摘してたのに、間違った対応されたんだもん。 保証期間うんぬんの話じゃないんだよ。
でどうなったの?
向こうも譲らず裁判になった。
あらら。で勝ったの?
まだ終わってないけど勝算は充分だし、 民事裁判ってだいたい和解で決着するからね、それなりの和解金はもらえるんじゃないかな。
じゃ良かったですな。
いやあんまり良くないんだ。裁判までいった時点で管理組合にはすごく負担がかかる。 もしも早い時点でウチが点検をして漏水を見つけていたら、たぶん裁判までいかずに済んだと思うんだよ。
何で?
だって保証期間中に見つかった欠陥なら向こうも、まぁ渋るは渋るんだけど、押せば直してくれやすいからね。 話がこじれなくて済む。
済む。
だから新築竣工や大規模修繕が終わって2年後にやるアフター点検の時に、ウチに立会いを依頼してほしいんだ。 保証期間内に欠陥を見つけること、これがとても重要なことなんだよ。
Point
費用について
ということでアフター点検にはぜひ外部の専門家を入れることを検討してほしい。
いくらぐらいでやってくれるの?
案件にもよるけど、うちの事務所だと大体35万円前後になることが多い。
結構するんだね。
もし何も見つからなかったら、それ丸損になるんでしょ?
何も見つからないってことはないと思うけどね。
第三者のプロが入れば、そうでない場合に比べて、無料で直してもらえる箇所は2〜3倍に増えるのが普通なんだ。
それは金額に換算するといくらぐらいの得になるの?
いやまぁ事案によりけりだけど、費用以上の価値は充分に出るんじゃないのかなぁ。
こういうヒビ割れやシートのはがれといった小さな不具合はどこのマンションにもあるから、細かく拾って施工業者に指摘するんだ。
素直に直してくれる?
誰が言うかにもよる。 管理組合が言っても、そんなヒビ割れなんてコンクリートの性質上仕方がないもので別に欠陥じゃないですよ、 と煙に巻かれるかもしれない。
てきとーなこと言うんだ。
小さなヒビ割れがコンクリートに必ず起こるというのは本当なんだけど、 小さくないヒビ割れまでそう言ってごまかされることが多いんだ。 よほど大きなものでないと直そうとしない。
ヒビ割れが小さいか小さくないかはどうやって決めるの?
ヒビの幅や深さによってちゃんと基準があるんだよ。幅0.3mm以上とか深さ5mm以上とかね。 うちはクラックスケールという道具で測定するから、施工業者に言い訳をさせない。
頼もしいですな。
直してもらえることになっても、まだ油断はできないよ。
次は直し方をチェックするんだ。
と言いますと?
ヒビ割れを直すといってもね、ただパテで表面を埋めるだけじゃ、またすぐに再発するかもしれないよね。
じゃどう直せばいいのさ?
ヒビの周囲を削って緩衝材をいれて力を分散して・・ある程度以上のヒビだとそういうことが必要になってくるの。 でもこっちが言わなきゃ、業者はなかなかやってくれない。
不親切ですな。
だからこそ専門家の助けが要ると思うんだよ。 こういう小さな欠陥を指摘して直してもらうだけでもそれなりに得をするし、加えて大きな欠陥が見つかることもあるわけだから。 何千万って額のお金が動いたこともある。
何千万レベルの欠陥が見つかったの?
いったい何があったんだろう?
施工業者がやるべき仕事を全くやってなかったことが判明したの。 ウチがアフター点検に入ってさ、あれ?仕様書見るとここは鉄部塗装してないといけないはずなんだけど、 やった形跡がないなぁと。
忘れてたってこと?
そんなの忘れないって。元がわりと綺麗な箇所だったから、塗装せずにクリーニングだけでごまかせると思ったみたい。 さぼったんだよ。
なかなかひどい話だね。
うん、こりゃ大変だと。
あんまり大きな話だからこっちも弁護士を立ててね、業者と協議をした。
裁判したの?
いや、裁判まではしてないんじゃなかったかな。その後は弁護士の仕事で自分は抜けたから詳しく知らないんだけど、 チラッと聞いたところでは何千万って額の補償金の提示が向こうからあったそうだよ。
そんなに広い範囲をさぼってたの?
ううん、鉄部塗装だから範囲は狭い。 でも塗り直すには改めて足場を立てないといけなかったの。だから補償金も高額になったと。
そのあと実際に塗りなおしたの?
知らない。補償金もらうだけもらって、積立金に当てたのかもしれない。 もらったお金を何に使うかは管理組合の自由だからね。
じゃ却って得したのかもね。
正当な権利だよ。使わなければ損しちゃう。
アフター点検には是非プロの助力を得ることをお勧めするよ。