まとめ 管理会社任せにしない大規模修繕を終えて
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こうして大規模修繕が終わりました。
おさらいしておくと、今回の工事には厄介な箇所が3つあったのでした。↓
- バルコニーの防水
- 駐車場天井の防水
- プロムナードデッキの補修
1.バルコニーの防水
バルコニー床のタイルを残したいと考える管理組合。 しかし防水工事のコストを考えれば、タイルをはがして長尺シートを敷くのがセオリー。
楽だけれど満足度が低い工事と、満足度は高いけれど道のりの険しい工事。 どちらを選ぶかは、マンションの熱意にかかっています。 このマンションは、困難なほうを選びました。
結果として、膨大な時間を議論や検証に費やすことになりましたが、 マンションの美観を守ることができたのでした。
2.駐車場天井の防水
天井から漏ってくる雨水。
これまではパンというお皿のようなもので受けていたので、美観を損なっていました。
私は土木の世界でよく用いられる改質剤という材料を使い、美観を損なうことなく水を止めることに成功。
これまで大規模修繕を行った業者も、改質剤のことは当然に知っていたはずですが、提案をしませんでした。
ここから得られる教訓、 業者は必ずしも管理組合に充分な選択肢を示さない、自分たちの慣れ親しんだ方法だけを提案し、 あたかもそれ以外の選択肢はないかのような言い方をしてくるかもしれない、ということです。
3.プロムナードデッキの補修
元々の壁の風合いを損なわない塗装材・仕上げ材を探し出すのに一苦労。 本当にそんな材料があるのか確証もない中で、諦めずに探すことで、ついにピッタリの材料を見つけ出しました。
ここから得られる教訓。
プロ・業者は日本中に存在する全ての材料を知っているわけではない、ということ。
諦めずに探すことで、道が開ける場合があります。
管理組合主導の大規模修繕を目指して
今回の仕事は管理組合からとても喜んで頂けましたが、自分でも満足のできるものでした。 何がよかったかといえば、管理組合の側に立ち、彼らの要望に正面から向き合えたことです。
実現の難しそうな要求であっても、すぐに切り捨てることなく、 もしかしたら可能ではないか、と粘り強く検討する。 それができるのがいいコンサルタントだと私は思っています。 自分にとって楽だからという理由で、自分たちが慣れ親しんだセオリーを管理組合に押しつけるようでは、管理組合の側に立っているといえないでしょう。
とはいえ、いいコンサルタントを見つけることが大規模修繕の成功の鍵だ、というわけでもありません。 いくらこちらが頑張ったところで、管理組合がそれに付き合う姿勢を見せず、 面倒だからさっさと終わらせてよ、という風でいるのなら、 こちらだって、じゃあセオリー通りの工法でさっさと決めてしまおうか、となります。
管理組合がもうそれでいいよと言っているのに、もっと検討しましょうとこちらから言う理由はないのです。
今回のマンションは検討の手間を惜しまずに、50回以上の、時には1日8時間にも及ぶ議論をする情熱を持っていたので、 こちらもそれに応えることができました。コンサルの力を引き出すのは管理組合の務めだということです。
管理組合主導の大規模修繕が大切だ、というのは、つまりはそういうことです。 自分たちが納得のいくまで話し合うことで、初めて満足のいく大規模修繕ができます。
自分たちにはとても無理だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。 私が見てきた、管理組合主導の工事を成し遂げた多くのマンションも、 初めから皆が模範的な組合運営をしていたわけではありません。
むしろそれまでは管理会社にお任せでやってきたのを、これではいけないと決意して、手探りで、苦労をしながら、進めてきたところが多いのです。 あなたのマンションでも、きっと同じことができます。
おまけ ビフォーアフター
最後におまけとして、今回のビフォーアフター写真を載せておきます。
これまでの2回の大規模修繕で手をつけられず先送りするしかなかった通路壁やバルコニー床の防水を、今回は行うことができ、 先述のように、管理組合から要望の高かった美観の維持も果たすことができました。
管理組合の要望をおおむね全て満たすことができ、それでいて臨時徴収を行うことなく、予算の範囲内に収めることができました。 組合の満足度も非常に高いものがありました。