どんな工事を行うかプランを立てる
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さて、建物しんだんが終わったら次は設計だ。
しんだんの結果に基づいて、どんな工事をすればいいか、いくらぐらいかかりそうか、コンサルが計画を立てることになる。
全部お任せにしとけばいいんだよね。
楽チンだ。
そうもいかないよ。管理組合はどんどん自分の意見を伝えないと。
自分たちのマンションなんだから。
だってただ傷んだ箇所を直すだけなんでしょ。
何を意見しろってのさ。
一口に直すと言ってもだね、色々なプランがありえるわけ。
工事のグレードやら耐用年数やら、いく通りも選択肢があるのだ。
そんなもんですか。
今回の工事をもっとも安く収めるためのプランもあれば、今回の工事は多少高くつくけど長期的に見ればかえって積立金を節約できるプランもあったりする。
管理組合が選べってわけですか。
そうね。そんな風に複数の選択肢を管理組合に提示できるのが優秀なコンサルだと思うんだよ。 「オレの決めた通りにしろ」ってタイプより、その方が良いと思わないだろうか?
う~ん、まぁね。
コンサルによってはさ、管理組合との打ち合わせを嫌がる人もいるわけ。
1人でズンズン仕事を進めたほうが楽だから。
横からあれこれ言われるのは楽しくないもんね。
でもマンションはそこに住んでる人たちのためにあるわけじゃないか。 住んでもいないコンサルの一存で工事が決まるなんて、何か違うんじゃないですか、というのもあるはずだ。
あるような無いような。
それにだね、大規模修繕ってさ、マンションのグレードアップのチャンスでもあるわけ。 これを機会に防犯機能を高めようとか、エントランスの照明をちょっとゴージャスにしようとか、色々なオプションがあるの。
へー、夢が広がるね。
まぁ現実には資金面の制約が大きくて、あんまり大したことはできないんだけど。
夢がしぼむね。
でも限られた資金と相談しながらマンションパワーアップのアイデア練るのも楽しそうじゃないか。 みんなでワイワイ言いながらさ。
みなさんふるって参加しましょう、と。
Point
工事にかかる費用は増える可能性がある
工事にいくらかかるかは、この設計段階で算出します。
しかし金額はあくまでも推定の値に過ぎない点に注意です。
いくら事前の診断や設計を綿密に行おうとも、やはり実際に工事が始まってから判明する問題もあります。 特に建物診断はしょせん足場をかけていない段階での調査なので、 いざ足場をかけて調べてみたら予想より劣化の箇所が多かったという可能性は大いにあるのです。
そのため大規模修繕には仕様の変更、追加の工事が付き物と考えるべきで、 予算もその分を見越して予め少し(5~10%)大目に取っておく必要があるでしょう。
ただし追加工事というのは割高となる傾向が強く (というのも工事が始まってからは今さら業者を変えることができない手前、向こうの言い値で価格が決まるので)、 できれば少なく抑えたいところです。
建物診断や設計に充分な時間を取らないと、追加の工事が増え、結果的に高くつきます。
工事の前の準備段階にしっかりと時間をかけるコンサルと契約をすることが大切です。
Point
コンサルに設計を依頼する落とし穴
「コンサル方式」の大規模修繕では、設計を一級建築士などのコンサルタントが、実際の工事は施工業者が、という具合に役割分担を計ります。 権限を1つの業者に集中させないことで不正が起きる可能性を減らすのが目的です。
しかしこれは同時に、工事の責任が複数の業者に分散してしまうことを意味します。 もし工事完了後に何か不具合が起きたとき、それが設計した側のミスによるものなのかそれとも施工側のミスによるものか、 アフター保証の責任の行方がはっきりしません。
双方の業者が互いに責任を押し付けあう形になると、 管理組合は最終的に裁判に訴えることでしか補償を求めることができません。 現実にはわずらわしさを嫌って泣き寝入りするマンションが多いのではないでしょうか。
「何かあったときの責任の行方がはっきりしない」
これはコンサル方式で大規模修繕を進める際の大きなリスクです。
経験豊富な会社に設計を依頼することの重要性が改めてわかります。
Point
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