建物診断を行おう
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さて、無事にコンサルを選ぶことができたら、次は建物しんだんを行おう。 建物がどれだけ劣化してるのか、コンサルに調べてもらうのだ。
どこを直せばいいか調べてもらうんだね。
プロが行う調査には3つの段階がある。
「予備しんだん」、「通常しんだん」、「精密しんだん」だ。
第1段階 予備診断
まずは簡易的な診断から始めます。
設計図を確認したり、マンション住人にヒアリングやアンケート調査を行い、どんなところを直す必要がありそうか簡単に探っていきます。
第2段階 通常診断
予備診断が終わったら、次は通常診断に入ります。
専門家がマンションの中をまわり、目視や(簡単な)器材を使い、劣化した部分を調べて歩きます。
目視というといかにもいい加減な検査という印象を持つかもしれませんが、 実際にはかなりのことがわかります。
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屋上のモルタル部分。
ヒビ割れしています。 -
タイル表面の仕上げ材が劣化しています。
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屋上ルーフィング下。雨水が浸入しています。
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廊下の塩ビシートが剥がれています。
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タイルを専用の器材で確認。 「浮き」が認められます。
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機械室の屋根。こうした小さなヒビも見逃しません。
第3段階 精密診断
本格的な専用の器材を使い、目視ではわからない建物の状態をチェックします。
たとえば「コンクリートの内部が劣化してないか」、「タイルの付着力が弱まってないか」など。
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壁に穴をあけ、コンクリートの劣化を調べます。
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コンクリートの中性化はあまり進んでいませんでした。
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タイルの付着力を確かめているところです。
第4段階 診断結果を報告
診断の結果を管理組合に報告します。 理事会(修繕委員会)に内々で報告するだけの場合もあれば、マンション全体に向けて説明会を開催する場合もあります。
住人の参加意識を高めるには、できれば公開の説明会を行うのが良さそうです。
予想以上に痛んでいた自分たちのマンションの様子を写真で見ることができれば、大規模修繕に向けて士気も高まるのではないでしょうか。
必要のない検査に注意
建物診断は「簡易」→「通常」→「精密」と段階が進むにつれて、劣化の詳しい状態がわかります。 この際マンションを徹底的に調べてほしいと考える管理組合が多いのですが、 診断にもお金がかかるので、あれもこれもと必要ない検査をして積立金をムダづかいするのは避けたいところです。
どこまでの検査が必要かはマンションによって変わります。
たとえば築10年のマンションであれば、コンクリートの深刻な中性化が起きている可能性は低く、
専用の器材を用いた劣化試験までは必要ないかもしれません。
そうは言っても、どうせならということで徹底的な検査を望む管理組合もあるでしょう。 それならそれで良いのです。必要ないかもしれないけれど一応調べておきたいと管理組合が考えるのであれば、 コンサルタントはそれに応えればいいと思います。
大切なのは管理組合に正しい情報を与え、選択肢を提示すること。
いたずらに管理組合の不安をあおり、あらゆる検査が必要だと信じ込ませ高い調査費用を請求するのは、
良心的なパートナーではありません。
Point
建物診断は全てが必要とは限らない。
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