管理会社お任せ方式での大規模修繕 その2
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管理会社お任せの大規模修繕は高くつくだけじゃない。
工事の品質にも不安がある。
管理会社は工事が下手なの?
というよりね、彼らの業者の選び方に問題があるのだ。
と言いますと?
順を追って説明しよう。 あのね、管理会社に工事を任せると言っても、実際に工事するのは下請けの施工業者なわけ。 別にフロントマンが黄色いヘルメットかぶってセメントこねるわけじゃないからね。
そうなんだ。
で、それが何だってのさ?
でもね、その工事業者と管理会社はいわば友達のようなものなわけ。
いつも一緒に仕事してんの。
だから何さ?
いいかい、友達だからという理由で施工業者を選ぶんだ。
技術力とか実績とかでじゃなく。
これってものすご~く不安になってこないか?
良い友達を選んで付き合ってるのかもしれないじゃない。
厳選された腕のいい業者だったりして。
なるほど、そうなのかもしれない。 でもそうじゃないのかもしれない。 管理組合としては自分たちに選択権がないのは怖いはずだ。
ふ~む。
そんなのまるで親の決めた相手と結婚するようなものだ。
たまたま自分にピッタリの人である可能性もあるけど、そうじゃない可能性のほうが高いんじゃないの。
つまりこの方式はお勧めしないと言いたいの?
そうだね。お勧めはしないね。
気持ちよく言い切ったね。
物事には何でも良い面と悪い面とがあるけどさ、 管理会社お任せの大規模修繕に関しては、良い面ってあんまり無いと思うんだよなぁ。
言いたい放題だな。
マンション管理士ってさ、どうしても管理会社の悪口言うのが仕事ですみたいなとこあるじゃない。 だからこういうこと言うと、たぶん白けた目で見る人も多いと思うんだけど・・。
うん、そのとおりだよ。
でも自分は本当にこのお任せ方式は良くないと思ってるんだよ。
そりゃもう心からね。ほとばしるぐらいに。
信じてくれたまへ友よ。
どうだかねー。
実際、この管理会社お任せ方式を取るマンション、最近はどんどん減ってるんだ。 いちばん楽なやり方なのにどうして敬遠され始めたのか、ここをよく考えてみてほしいな。
Point
管理会社おまかせ方式の強力なメリット
公平を期すために、管理会社お任せ方式のメリットについてもう少し説明します。
既に述べたように最大のメリットは大規模修繕を進めるに当たって管理組合の手間が大きく省けることですが、
もう1つ見逃せない点があります。すなわち「アフター保証の安心」。
例えば工事が終わった後に、そうですね、あなたの上の部屋から水が漏れてきたとしましょうか。 天井からポタポタと。
この場合、もしも管理会社に施工を任せていたのであれば話は簡単です。
会社に連絡をすればいい。あとは彼らが何とかしてくれるでしょう、保証期間内であれば。
修復工事にはもしかしたら上の階の住人(ここでは仮に佐藤さんとしましょうか)の協力が必要になるかもしれませんが、 管理会社は当然佐藤さんのこと(連絡先とか)を知っているので、うまく連絡を取り工事を完了させるでしょう。
もしこれが管理会社が施工に関わっていないとすると、つまり別の業者に任せていたとすると、話がこじれるかもしれません。 そもそも誰に修理をお願いすればいいのかわかりにくい。
施工業者に不備があったのか、設計した事務所のミスなのか、 責任の行方がどうもはっきりしない。 あなたはしばらくの間、不安な思いを強いられるかもしれません。その間も水漏れは止まりません。
もし工事業者が責任を負うことになったとして、 でも業者はあなたのことやあなたの上の階に住んでいる人(佐藤さん)のことを知りません。 あなたも佐藤さんのことを知らないし、佐藤さんだってあなたのことを知らない。
互いによく知らないもの同士が連携して工事に当たらなければいけないのは、何となく憂鬱なもの。 大したハードルではないのかもしれませんが、心理的に負担です。
トラブルに見舞われて弱気になっているときは、こういう小さなことでも大きくのしかかってくるものです。 もしかしたら途中で業者に逃げられるのではという不安だってつきまといます。
工事完了後に万が一何かが起きたとき、最も安心できるのは管理会社に施工を任せていた場合でしょう。 これは確かです。
ただそうした安心を買うために割高の工事(もしかしたら数千万円も)を引き受けなければいけないのだとすれば、 どちらが得なのかを慎重に秤にかけるべきだと思うのです。
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