安くて良い施工業者を探す
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次は施工業者の選定です。
選定は、以下の流れで進みます。↓
1 見積もり依頼
2 建物診断
3 見積りを開封
4 プレゼンテーション
STEP1
業者のリストアップ・見積り依頼
管理組合と相談のうえで、見積りを依頼する先を決めます。
今回は、東京に事務所のある中堅どころの業者4社と、このマンションの新築施工を手がけたゼネコン1社の、計5社に見積りをお願いすることにしました。
中堅どころを選んだのは、大手では高くつき、かといって小さな業者では経験や経営の安定性に欠けるとの判断からです。 資本金や実績、ホームページの内容などを比較し、4社を選び出しました。
ゼネコンの1社は大手だったので、たぶん難しいだろうと思っていたのですが、新築時の縁があるので一応話を聞いてみようといったところでした。
STEP2
施工業者による建物調査
それぞれの業者にマンションまで来てもらい、建物調査をしてもらいます。
マンションのどこが傷んでいるか実際に見てもらい※、数量はどのくらいか、修繕費用がいくらかかるのか、見積りを提出してもらうためのものです。
現地調査では、1社だけ明らかにやる気のない業者がありました。
あの会社は不安ですね、とマンションの方とも話していたのですが、予感はこの後的中します。
その会社の提案はやはり貧弱なものでした。
見積りの金額の内の外壁補修の分は推量であり、追加費用が発生する可能性があります。
(むしろ発生するものと考え、予め5〜10%の余裕を取っておくべきです。)
STEP3
提出された見積もりを比較する
施工業者5社から、見積りが提出されました。
金額を比較すると、おおよそ以下の通りです。↓
会社 | 見積り金額 |
---|---|
A社 | 普通 |
B社 | 普通 |
C社 | 安い |
D社 | 普通 |
E社 | 抜きん出て高い |
1社だけ飛び抜けて高い見積りを提示したところがありました。
このマンションの新築施工を請け負った、大手ゼネコンのE社です。
ある程度高くなることは事前に想像できたとはいえ、驚いたことに、最も低い金額をつけたC社とは、2倍以上の金額差がありました。
「複数の業者から見積りを取らずに、最初からE社に任せていたらと思うとゾッとする・・」
管理組合役員の方の言葉です。
相見積りを取ることの重要性を実感されたようです。
見積りの詳細を分析する
とはいえ、単純に金額だけで判断するわけにはいきません。
内容とのバランスが重要です。
とりわけ今回の案件では、前述の通り、私たちの事務所は詳細にわたる仕様書を作成していません。 私たちは設計の大枠(工法や材料など)を提示するに過ぎず、どこをどれだけ直すか(数量拾い)は、基本的にそれぞれの施工業者の判断に任せています。
したがって各社の提案内容はまちまちで、金額を比較しようにも単純にはいきません。 そこで仕様の詳細を私たちが分析。 すると各社の価格の実態が見えてきました。↓
会社 | 見積り金額 | 提案内容 |
---|---|---|
A社 | 普通 | 普通 |
B社 | 普通 | 普通 |
C社 | 安い | 悪い(最低限の仕様を満たしていない) |
D社 | 普通 | 良い |
E社 | 抜きん出て高い | 普通 |
最も低い価格をつけたC社ですが、詳しく分析してみると、こちらが頼んでいた箇所の修繕が仕様に含まれていませんでした。 仕様の大枠はこちらで定めていたにもかかわらず、抜け落ちた仕様※で見積りを提出していたのです。
それでは価格が安くても、直ちに評価できません。
見積りの再提出を求めました。
飛び抜けて高い価格をつけたのはE社ですが、分析してみると、提案の内容も特にどうということのないものでした。
この価格でこの提案では話になりません。
早々と候補から脱落です。
A社とB社は価格も提案内容も平凡で、特に目を引くところがありませんでした。
可もなく不可もなくといったところ。
イダケンは見積りを依頼する際に、各社にアンケートを送付し、どのようなサービスをしてくれるのか、細かいところを色々と質問するのですが、A社とB社の回答は管理組合を満足させる決め手を欠いている印象でした。
管理組合の評価が最も高かったのがD社です。
金額面では特に目立たなかったものの、こちらが送ったアンケートに丁寧に熱意を持って答えてくれ、また内容も満足のいくものでした。
工事の際に出るゴミの処理を一定量まで無償で引き受けてくれたり、エアコンを無償で移動してくれたり、というプラスアルファのサービスが管理組合の心をつかんだようです。
とりわけ管理組合が評価したのは、D社が工事現場に責任者の社員を常駐させることを約束してくれた点。 巡回の監理では不安だという声が管理組合の間で挙がっていたので、この点でD社が大きく優位に立ちました。
一方、イダケンの目から見てD社が優れていたのは、外壁タイルの修繕予定枚数を、他の業者に比べて多く取っていたこと。 つまりタイルをたくさん直すプランを立てていた点です。
前のページで述べたように、 今回の案件では外壁タイルの修繕費用をいかに抑えられるかが鍵。 イダケンが最も恐れていたのは、外壁タイル修繕に多額の追加費用が発生する可能性です。
「足場をかけて詳しく調べてみたら追加費用がたっぷりかかることがわかりました!」 という事態だけは避けたかったのです。
その点D社は、最初からかなりの枚数の外壁タイルを直すプランを立てており、すなわちそれは追加費用が他の業者より少なく済む可能性が高いということ。
たくさんのタイルを直すつもりでありながら、金額は他の業者とそう変わらないのですから、お得です。
見積り金額だけ見ればD社のつけた額は目立たないものでしたが、内容を精査すればコストパフォーマンスの高さが見えてくる、というわけです。
STEP4
施工業者によるプレゼンテーション
見積りを提出した5社から、C社とD社の2社に絞り込み、公開プレゼンテーションを行ってもらうことになりました。 ここでC社とD社のおさらいをしておきます。↓
【C社】
見積りで最も安い金額をつけたものの、こちらの指定した仕様を満たしていなかったので、見積りの再提出を求める。 仕様を満たしてもまだ他社より割安になる可能性があると判断し、プレゼンの候補に残す。
【D社】
価格と提案内容のバランスが最も取れていた、今回の本命。
実はプレゼンが始まる前の時点で、管理組合の心中は8割方、D社で決まっていたようなものでした。 一応C社が再提出する見積りも確認してみよう、ぐらいのつもりだったのですが、C社が再提案した金額は、却ってD社の金額よりもわずかに高いものでした。
したがって、C社には悪いですが、始まる前から既に勝負は決していたも同然。
参加者からも大して質問は出ず、追加費用や工事中の騒音について、ぐらいのものでした。
こうしてD社に内定。
イダケンが交渉をして、さらに費用を3〜40万円ほど下げてもらうことに成功。
その後、諸々の事務手続きがあり、3月の総会で施工業者が正式に決定。
大規模修繕の準備に取りかかったのが前年の10月ですから、はや半年が経過していました。
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